丸まった針の先に視線を向ける

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藝大在学中に生み落とした文章や想い達 かわいいかわいい我が子

劇団フェリーちゃん 旗揚げ公演「Ma les me Role」 劇評

僭越ながら、先週観劇した舞台の劇評を書かせていただきました。

ご一読いただければ幸いです。

 

 

劇団フェリーちゃん 旗揚げ公演「Ma les me Role」

 

 

躍動する身体と言葉、そして意志が、密な舞台に広がっていた。

 

新宿眼科画廊 スペース地下にて2017年5月、劇団フェリーちゃん旗揚げ公演「Ma les me Role」が上演された。田野ひより原案の脚本を14人で演じた今回の舞台は、旗揚げにふさわしい公演だった。

 

王国には、原因不明の死に至る病が蔓延している。病が王宮内にも魔の手を伸ばす中、薬の研究は追いつかずにいた。水沢まな美演じる王女、シェリーは王国の危機に焦燥感を募らせる。肩書きでなく本物の女王になるという願いを内に秘め、自身に出来る事はなにかを考え倦む。そこに現れた、なにわえわみ演じる謎の吟遊詩人、ユキサカ。やけに道化に振る舞うユキサカに導かれ、人々は渦巻く水の中へと航海を始める。

 

コンクリートの壁に役者の影を縫うように掛かる重厚な絵画。成された空間は、居館となり洞窟となり、海原となった。役者の指が鍵盤を弾き、一音一音がユキサカの歌声と共に会場を包む。観客と役者の間に距離はほとんどなく、感情の波は否応なく私たちを巻き込んだ。

船に変貌するユーモラスを含む役者の身体に、詩的な歌に、壁を蹴る荒々しさに、観客は国の安寧を願わずにはいられなくなった。微笑ましい夫婦の会話、コミカルな海賊たちの掛け合いが笑いを誘い、物語後半の有痛性を助長する。

 

病の正体を知る者、身分に懊悩される者、最愛の人を失う者。それぞれが持つ宿命と悲しみ、願いが、イシに翻弄されることで呈露した。すべき、したい、の境界が曖昧な日々を送ってきた彼らの姿は、私たちであった。本当にしたい事は何、と劇中繰り返し投げかけられる問い。それは時折、観客に向けられている言葉となっていた。答えられない私たちは、悲しみに俯く役と相違ない。想いがあっても、あの密な空間やこの生活の中では、「答え」という言葉として形を成し得ないのかもしれない。

 

犯した罪に、絶望に多くの人が死に絶えて、残された人々の顔にも生気はない。願いのイシに仕える巫女の透き通った肌が青白く照らされ、目を離せなくなる。少しの沈黙の後、すべての人の願いと痛みを背負うようにして、ユキサカは笑みを浮かべた。彼らは答えを出した。出さざるをえなかったのかもしれない。

彼らの本当の願い、「イシ」を私たちは見た。

 

そしてそのすぐ影に、役者たちの意志の垣間見える公演であった。

劇団フェリーちゃんの大航海が始まった。

 

 

 

キャスト 

水沢まな美 / 奥津慶彦 / 半仁田みゆき / 合田考人 / 伊藤瑛佑 / 田口祥子 / 岩崎あゆみ

岡田勇輔 / 汀(風凛華斬) / いろは / ヤマモトリカ

ヒガシナオキ / 柚木成美

なにわえわみ

 

スタッフ

原案:田野ひより / 脚本・演出:なにわえわみ / 舞台監督:ヒガシナオキ

照明:江花萌里 / 音響:江口信(キャンディプロジェクト) /

美術:すみよしこ / 住吉美玲 / 小金井文珠堂 / 制作:水沢まな美

制作協力:黒田哲平(Voyantroupe) / 当日運営:志水淳

フライヤーデザイン:中谷篤基(夜弄(び)モンド・鳥の首企画)

 

劇団フェリーちゃん

     gekidanfelichan.wixsite.com/myship    

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